仕事を終える前に、30分ほどかかる整理作業をClaude Coworkに任せ、通勤のためにノートPCを閉じたとする。タスクはその後も動き続けるが、次の手順でPC内の表計算ファイルを読む必要があるなら、シャットダウン後はそこへアクセスできない。Coworkのクラウド移行が解決するのは「タスクの実行をこのPCに縛らないこと」であり、クラウドがPC全体へのアクセス権を自動的に得ることではない。
この区別は、Coworkでファイルを扱ったり、スケジュールタスクを設定したりするProおよびMaxユーザーにとって特に重要だ。Anthropicのヘルプページには、変更予定日として2026年10月6日が記載されている。この日以降、新しいCoworkタスクはデフォルトでクラウド上で実行され、「コンピューター上のみ」オプションは削除される予定だ。ただし、すべてのタスクがすでに移行したという告知ではなく、公式も新しい体験を段階的に展開中だと説明している。
クラウド移行で変わるのはタスクの実行場所
クラウド版Coworkの処理は、ノートPCではなくAnthropicのサーバー上で動く。公式の説明によれば、タスクはバックグラウンドで継続でき、スケジュールタスクの実行にデバイスのオンライン状態は必要ない。同じ会話とファイルも、Claudeアカウントを通じてデスクトップ、ウェブ、モバイルで引き継げる。
以前は「PCをシャットダウンした」ということが、そのPC上の作業も停止したことを意味しがちだった。クラウドタスクでは、この2つが切り離される。PCがオフラインになっても、タスクはクラウドで動き続けられる。遠隔地のオフィスにいる同僚へ仕事を引き継ぐようなものだ。渡した資料で作業は続けられるが、だからといって自分の机の鍵まで自動的に渡るわけではない。
会話がアカウントに紐づいているからといって、すべてのデバイスで同じ機能が使えるわけではない。ウェブやモバイルでは進捗の確認、質問への回答、タスクの方向転換ができる。一方、ローカルファイルの読み取り、ローカルコネクターの利用、PCの操作には別の条件が残る。
ProとMaxには明確な変更予定日があるが、古いタスクがすべて強制移行されるわけではない
Anthropicのヘルプページによれば、2026年10月6日から、ProとMaxユーザーの新しいCoworkタスクはクラウド上で実行され、「コンピューター上のみ」という設定は削除される予定だ。PC上ですでに開始したタスクはローカルに残り、完了するまで実行を続けられる。公式は、こうしたタスクの上部にtranscript(タスクのテキスト記録)のダウンロード入口を用意し、作業をClaude Codeで続けられるようにすると説明している。
ここでは2つの境界に注意したい。1つ目は、これは公式が示した変更予定日だということ。機能と新しいClaude体験は段階的に展開されているため、すべてのアカウントがすでに切り替わったと読むべきではない。2つ目は、古いタスクがローカルに残ることと、プロジェクト、スケジュールタスク、完全な作業環境まで記録と一緒に移行することは別だという点だ。公式は、プロジェクトとスケジュールタスクはClaude Codeに持ち込まれないと明記している。
そのため、ローカルで長時間のタスクを実行中なら、「今後はデフォルトでクラウドになる」だけを見てはいけない。現在のタスクがローカルのリソースに依存しているか、記録を残す必要があるかを先に確認する必要がある。タスクのtranscriptで持ち出せるのはテキスト上の文脈であり、元のPCにある権限や環境のすべてではない。
タスクが実行中でも、ローカルファイルを読めるとは限らない
ローカルファイルへのアクセスは、最も誤解されやすい部分だ。Coworkがアクセスできるのは、ユーザーが明示的に接続したフォルダーだけ。クラウドがファイルを必要とすると、そのファイルのコピーを取得する。Anthropicによれば、これらのコピーは会話を削除した際に、同社のデータ保持ルールに従って削除される。ディスク全体がクラウドに同期されるわけではない。
さらに重要なのは、クラウド上の会話からローカルファイルを読み書きするには、そのPCでClaude Desktopを開いたままにする必要があることだ。デスクトップアプリを閉じると、クラウドタスク自体は動き続けても、ローカルファイルにはアクセスできない。たとえば「最初にオンライン資料を分析し、次にローカルの表計算ファイルを開いて数字を補う」という流れなら、PCがオフラインになった後も前半は続く可能性があるが、後半は入力不足で止まる。
ローカルコネクターや、ローカルMCPサーバーを含むプラグインもデスクトップアプリに依存する。コンピューター操作、つまりClaudeが画面を直接クリックしたり入力したりする操作にも、同じくデスクトップアプリが必要だ。ブラウザータスクは、具体的なモードと接続方法によって異なる。ウェブやモバイルの会話が、ブラウザーとデスクトップを複製したクラウドPCになるわけではない。
ここは注意が必要だ。進捗表示が動いていても、タスクの次の手順に必要なリソースがあるとは限らない。「タスク実行中」を「すべての入力が利用可能」と読み替えると、納品直前になってローカルファイルが足りないことに気づく可能性がある。
デバイス間の引き継ぎで解決するのは監督であり、PCの複製ではない
Coworkのデバイス横断機能には実用性がある。スマートフォンからタスクを確認し、Claudeの追加質問に答え、方向を変え、完了時や入力が必要なときに通知を受け取れる。調査、下書きの整理、プロジェクトの知識を使う作業など、ローカルPCの状態に依存しない仕事なら、1台のPCの前に張り付く必要がなくなる。
ただし、会話をデスクトップで開始し、タスクがローカルファイルやデスクトップブラウザーを必要とする場合、スマートフォンから監督していてもデスクトップアプリはオンラインでなければならない。スマートフォンで会話を引き継げても、デスクトップ側のローカルリソースまでスマートフォンに移るわけではない。ローカルファイル、ブラウザー、コンピューター操作に対するウェブとモバイルの対応も、オンラインのデスクトップアプリを介して提供される場合がある。
実際に運用するときは、「シャットダウンできるか」を先に考えるより、「次に何へアクセスするタスクなのか」を確認する方がよい。クラウド上のデータとアカウント内のコネクターだけを使うタスクは、バックグラウンド実行に向いている。ローカルフォルダーの読み取り、ローカルブラウザーの操作、PC画面のクリックが必要なタスクでは、デスクトップアプリがオンラインであることを前提にする。
移行前にリソース依存の一覧を作る
手元の作業は、次の3種類に分けられる。
| タスクの依存先 | シャットダウン後の判断 | 開始前に確認すること |
|---|---|---|
| クラウド上の会話、接続済みのオンラインサービス | クラウドタスクは継続できる | 使用するコネクターが現在のクライアントに対応しているか |
| PC内のフォルダー | タスクは続けられるが、ローカルファイルへのアクセスを失う | フォルダーが接続済みで、デスクトップアプリを開いたままにできるか |
| ローカルコネクター、コンピューター操作、デスクトップブラウザー操作 | クラウドだけで完了できると決めつけない | デスクトップアプリがオンラインか、現在のブラウザー方式がサポートされているか |
この表は、すべてのアカウントで全機能が使えることを保証するものではない。Anthropicはウェブ版とモバイル版のCoworkをbetaと位置づけており、機能も段階的に展開している。利用できるかどうかは、アカウント、プラン、現在のクライアントの状態によって異なる。
スケジュールタスクも同じだ。公式は、スケジュールタスクはクラウドで実行され、デバイスを起動したままにする必要はないと説明している。一方で、PC内のファイルに関わるスケジュールタスクには、デスクトップアプリを開いておく必要があるとも明記している。「スケジュールタスクがクラウドに移る」を、「すべてのスケジュールタスクがノートPCのシャットダウン後に完了する」と単純化してはいけない。
チーム内で明確にしておきたいデータ上の境界もある。クラウドタスクは接続されたファイルを処理するためにファイルのコピーを使い、Anthropicの説明では、会話を削除するとそのコピーも削除される。会話をClaudeの改善に使うかどうかは、アカウントのプライバシー設定にある「AIモデルの改善に協力する」オプションに従う。機密性の高い資料を扱う場合は、どのフォルダーを接続しているか、タスクがどの内容に触れるか、チームに適用されるプライバシー設定を先に確認したい。
結論はシンプルだ。作業に必要なのがタスク本体とクラウドサービスだけなら、シャットダウン後も続けられることは実用的な改善になる。しかし、ワークフローの重要な手順がPC上で行われるなら、そのPCもタスクの一部だ。移行前にフォルダー、コネクター、ブラウザー、コンピューター操作への依存を一つずつ洗い出し、どのタスクをクラウドに任せられるかを判断しよう。


